記憶の仕組み

「自分は記憶力が悪くて」とおっしゃる方が時々いらっしゃいいます。でもそれは間違った思いこみかもしれません。単に脳の使い方を知らないだけの可能性が高いのです。実は記憶力を上げるための科学的で効率の良い脳の使い方マニュアルがあるのです。記憶力日本一である当協会会長も脳の構造はみなさんといっしょです。ただ効率良く脳を使うコツをみなさんより知っていて、その方法で練習を積み重ねたにすぎません。仕組みを知れば誰でも記憶力を伸ばすことはできるのです。もちろん当協会の講座も脳の記憶の仕組みを利用して構成されております。

短期記憶と長期記憶

記憶の種類には大きくわけて短期記憶と長期記憶に分けられます。短期記憶とは初対面の相手の名前やその場で聞いた電話番号など何もしないと数秒ほどで消えてしまう記憶で、それに対し長期記憶とは学習して身に付けた知識や体験の記憶など長期間頭のなかにとどめておくことができる記憶のことです。
一般的に記憶力が良いと言うときの記憶とは長期記憶を指しているように思われます。長期記憶として保管されるためには脳内の「海馬」という部位が、この情報は重要だと判断することが必要です。「海馬」にこれは重要な記憶であると判断する仕組みもわかっています。

意識と感情

見る物聞くものなんでも記憶できればこんなにすごいことはないですが、実はそうなると脳はオーバーフローを起こしてしまいます。なので脳はできるだけ無駄な記憶を取り込まないようとします。脳にとってその情報が無駄かどうかをきめる判断基準はそれが覚えようとする「意識」とその情報に伴っている「感情」です。たとえばカギを置いた場所を忘れてしまった場合を例にあげると、そのカギを置いたとき「この場所を覚えておこう」という意志が働いておらず、無意識に置いたと思うのです。またその時にそのカギに対し何の感情も湧いていないのも当然のことでしょう。そのように「意識」も「感情」もどちらも働いていないため忘れてしまったと考えられるのです。

想像

「りんごを思い浮かべてください」と言われたら、頭の中に浮かぶのは赤い(人によっては青いかもしれませんが)りんごの「映像」だと思います。「りんご」という文字を浮かべた人はいないでしょう。それが人間の思考の特性なのです。そこで効率の良い記憶の方法として映像を利用するのが理にかなっているのです。また「意識と感情」のところでも述べましたが、感情を伴った情報は記憶に残りやすいという脳の特性があるため、絵を想像することによりなんらかの感情が発生するところも映像を利用して覚えることの利点です。

神経可塑性

昔は脳も筋力や体力などと同じように加齢によって衰えていくものと考えられていました。確かに神経細胞の数は生まれたばかりの時が一番多く歳をとっていくに従い減っていくのも事実です。しかし最近の研究で人間はどの時点でも脳の神経細胞をある方法により増やせるということがわかってきました。この特性を可塑性と呼びます。膨大な情報量の記憶を要求されるイギリスのタクシー「ブラックキャブ」の運転手の脳を調べたところ記憶の司令塔である「海馬」の大きさが一般の人と比べて著しく大きくなっていたそうです。この研究結果に脳の神経細胞を増やすためのヒントがあるのです。つまり脳は使えば使うほど神経細胞が増えるということです。したがって記憶に関係する神経細胞も鍛えることができるのです。

復習

「忘却曲線」というものをご存じでしょうか。何かを覚えたとして、その記憶に対して何もフォローしないでいると自然と記憶が忘れ去られていきます。その様子をグラフに表すと覚えた直後から4時間の間に急激に記憶量は半分に減り、その後なだらかに下降していくという特性をもっています。ですから覚えた記憶を長期に保持しようと思ったら、あるタイミングで繰り返し復習することが重要になってくるのです。また「短期記憶と長期記憶」でお話しした「海馬」という部位は何度も繰り返し入って来る情報に対し、これは重要な情報だと判断する性質をもっています。これにより海馬によって選ばれたその情報は大脳皮質というところに送られ長期記憶となるのです。